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【映画】機動警察パトレイバー2

機動警察パトレイバー2


ビデオ屋でスキージャンプペアと一緒に借りてきました。
この作品かなり好きです。別に押井守だからっていうわけじゃないですよ?
もともと漫画のパトレイバーが好きでしたし。
ただ漫画のパトレイバーから約1年後の話で、かつ主要キャラのほとんどがチョイ役でしか登場しない(後藤さんと南雲さんんがメイン)ため、もともと漫画から好きだったファンにはかなり物足りなく感じるかもしれません。


ちなみにこの作品を私が最初に見たのは9.11のテロの直後。
日本の国防論が俄かに盛り上がったきたころです。
本作品もテロがテーマなのですが(モチーフは2.26事件)、タイムリーに見てしまって色々考えてしまったものでした。
アニメ作品ですが、脚本も映像もかなり力を入れていたのでは、と感じます。ちゃんと伏線も隠されてますし、印象的なシーンや台詞も沢山あります。


特にシーンと台詞で私が一番印象に残っているのは以下でしょうか。

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荒川(自衛官):後藤さん。警察官として、自衛官として、俺達が守ろうとしているものってのは何なんだろうな。前の戦争から半世紀。俺もあんたも生まれてこの方、戦争なんてものは経験せずに生きてきた。
平和。俺達が守るべき平和。
だがこの国のこの街の平和とは一体何だ?
かつての総力戦とその敗北、米軍の占領政策、ついこの間まで続いていた核抑止による冷戦とその代理戦争。そして今も世界の大半で繰り返されている内戦、民族衝突、武力紛争。そういった無数の戦争によって合成され支えられてきた、血塗れの経済的繁栄。それが俺達の平和の中身だ。戦争への恐怖に基づくなりふり構わぬ平和。正当な代価を余所の国の戦争で支払い、その事から目を逸らし続ける不正義の平和。


後藤(警察官):そんなきな臭い平和でも、それを守るのが俺達の仕事さ。不正義の平和だろうと、正義の戦争より余程ましだ。


荒川:あんたが正義の戦争を嫌うのはよく分かるよ。かつてそれを口にした連中にろくな奴はいなかったし、その口車に乗って酷い目にあった人間のリストで歴史の図書館は一杯だからな。
だがあんたは知ってる筈だ。正義の戦争と不正義の平和の差はそう明瞭なものじゃない。平和という言葉が嘘吐き達の正義になってから、俺達は俺達の平和を信じることができずにいるんだ。
戦争が平和を生むように、平和もまた戦争を生む。単に戦争でないというだけの消極的で空疎な平和は、いずれ実体としての戦争によって埋め合わされる。そう思ったことはないか。
その成果だけはしっかりと受け取っておきながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方に過ぎないことを忘れる。いや、忘れた振りをし続ける。そんな欺瞞を続けていれば、いずれは大きな罰が下されると。


後藤:罰? 誰が下すんだ。神様か


荒川:この街では誰もが神様みたいなもんさ。いながらにしてその目で見、その手で触れることのできぬあらゆる現実を知る。何一つしない神様だ。神がやらなきゃ人がやる。いずれ分かるさ。俺達が奴に追い付けなければな。

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今の先進諸国(特にここでは日本)の経済繁栄は血塗れの戦争で成長し、成り立っているのだという問題提起。
まぁ実際に立証のしようがないテーマですが、非常に興味深い。


「正当な代価を余所の国の戦争で支払い、その事から目を逸らし続ける不正義の平和。」
アメリカとソ連の代理戦争としての朝鮮戦争などはいい例だろう。


「その成果(戦争による経済効果)だけはしっかりと受け取っておきながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方に過ぎないことを忘れる。」
これは我々の日常だ。日本で作っている鉄鋼やら電気機械やらが遠い国で使われていないとはいえないだろう。この際輸出規制などなどの諸規制などは横においておくが。
それによる富の恩恵を預かるのは誰だろうか。そしてその代償として血を流すのは。


また後藤が後の場面で発する一言。
「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。」
見えないものは分からない。その場にいないものは現実味がない。
自衛隊イラク派遣をめぐって、自衛隊の安全を問われた質問に小泉首相がこう答弁した。
自衛隊が活動している地域は、非戦闘地域なんです」
なんとお粗末なことか。
そして派遣されていったイラクで起こったことはご存知のとおり。
たしかにサマーワでは目立った事件は起きなかった。その意味では小泉首相の発言は結果論として当たったかもしれない。
ただ、明らかにそれは結果論でしかなかったのは誰しもが感じることだろう。
一国の首相とて一人の人間。それが全ての諸問題を当事者として判断できるとは思わないが、この発言は余りにも上記の後藤の発言に合致するような状況であった。事実私は小泉首相の答弁を聞いたときに、この台詞を思い出してしまった。



まだこの映画について言及したいことはありますが、今日はここまで。
また追記します。